U22プロコン「AIを用いた自動車運転能力測定装置」など経産大臣賞、最終審査会が初のオンライン開催
2020年12月02日
ニュース
U-22プログラミング・コンテスト実行委員会は11月29日、U-22プログラミング・コンテスト2020 最終審査会を開いた。41回目を数える今回は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、初めてのオンライン開催。プレゼンテーションを含めた審査会の模様はニコニコ生放送で配信した。応募総数348作品の中から16作品が勝ち残り最終審査会に臨んだ。16作品の内訳は、小学生が3、中学生1、高校生4、高専生1、専門学校生5、大学生2と幅広い。ジャンルもゲームから学習、プログラミング言語、AIと多岐にわたった。経済産業大臣賞には部門ごとに4作品が栄冠に輝いた。
経済産業大臣賞総合部門は東京医科大学の西村太雅さん・野田都里人さんの「AIを用いた自動車運転能力測定装置」、プロダクト部門は守山市立速野小学校 越智晃瑛さんの「点体望遠鏡」、テクノロジー部門は愛知工業大学情報電子専門学校 坂井田逸斗さんの「3密チェッカー」、アイディア部門は富士市立富士南中学校の鶴田慈貴さんの「deepMusa」がそれぞれ受賞した。
今回突出して完成度が高かったのが、総合部門で経済産業大臣賞を受賞した東京医科大学の西村太雅さん・野田都里人さんの「AIを用いた自動車運転能力測定装置」。プログラミングだけでなく、3Dプリンタなどを駆使して実用段階に近いハードウェアも作り上げた。高齢者の自動車事故が社会問題になるなか、運転能力の測定方法が不十分だとして、測定装置の製作を決めたという。より実戦的で簡単に運転能力を測定する方法として、眼球の動きに着目。脳に直結し疾患によって挙動が変化することを利用した。赤外線カメラで動きを捉え、データ化しAIで評価することで客観的な運転能力の測定を可能にしたことが評価された。
テクノロジー部門で経済産業大臣賞を受賞した、愛知工業大学情報電子専門学校の坂井田逸斗さんの「3密チェッカー」。タイトル通り密閉・密接・密集をチェック、記録し、行動変容のきっかけにできるスマートフォンアプリだ。新型コロナウイルス感染症の予防に役立つ。GPSやマイク、Bluetoothを活用し、移動速度や周囲の端末数、雑音の状況などから3密の状態を測定。実用性の高さが光る。複数のメディアでも紹介されすでに多くのユーザーが利用しているという。また、アイディア部門で経済産業大臣賞を受賞した富士市立富士南中学校の鶴田慈貴さんの「deepMusa」は、楽譜の画像からmidi、mxml、wav形式で音楽ファイルとして出力するウェブアプリ。中学生ながら、AIを駆使し難易度の高い楽譜の音楽データ化を実現させた。
プロダクト部門で経済産業大臣賞を受賞した守山市立速野小学校の越智晃瑛さんの「点体望遠鏡」は、ひらがやなカタカナを点訳するソフトで、点字や文字を同時に印刷でき、ファイルの入出力や点字ディスプレイでの表示を可能にし、3Dプリンターで点字の凹凸をつけたキーホルダーを作成することもできる。「点体望遠鏡」に至るまで4段階の作品を経ており、小学生ながら完成度の高さが際立った。
最終審査会の開催にあたり、あいさつに立ったサイボウズの代表取締役社長で、U-22プログラミング・コンテスト2020 実行委員会の青野慶久・実行委員長は「今年はまず開催できるかが心配だった。プログラミングどころではない学生が多かったのではないか。オンラインながら例年通りの応募があり、無事開催にこぎつけた」と話した。最後に、東京通信大学教授、早稲田大学名誉教授で、U-22プログラミング・コンテスト2020の筧捷彦・審査委員長は「小学生から大学生まで多くの若者が素晴らしいアイディアと力量を発揮してくれた。この力で日本全体を押し上げてくれることを期待している」と総評した。次回、42回目のU-22プログラミング・コンテスト2021の実施詳細については、来年4月ごろ発表の予定。(ITジュニア育成交流協会・道越一郎)