三重にU-16プロコンの波、鳥羽商船高専で事前講習会を開催
2017年08月31日
ニュース
三重県にU-16プログラミングコンテストの波がやってきた。10月22日、国立鳥羽商船高等専門学校で、作品部門のU-16プログラミングコンテストが開催される。これに先立って、夏休み期間中の小・中学生を対象に鈴鹿高専と鳥羽商船高専で事前講習会が開催された。
2011年に北海道旭川市で始まった16歳以下の子どもたちを対象にしたプログラミングコンテスト=U-16プロコンには、対戦型ゲームでプログラミングの技術を競う競技部門と、CGやウェブページ、プログラムなど、自由に作成したデジタル作品を審査員が評価する作品部門がある。昨年12月に第1回を開催した愛媛県松山市のU-16プロコン松山大会は競技部門で腕を競ったが、三重大会はこれまで実績を積み重ねてきたデジタル作品づくりで、プログラミングに親しんでもらう。
鳥羽商船高専は、夏休みに地域の小・中学生に科学・技術やものづくりを体験してもらおうと、毎年、公開講座「サイテクランド in 鳥羽商船高専」を開催している。3年前には、このなかにシングルボードコンピュータ「IchigoJam」を使って実際にゲームやアプリをつくる講座「いちごジャムでマイコンプログラミング」を設けて、子どもたちにプログラミング体験を提供してきた。
今年はプログラミング体験だけではなく、「秋のコンテスト」という目標を置いて、U-16プログラミングコンテスト三重大会の事前講習会として開催。講師陣に学生を加え、「プログラミングを学ぶ先輩たちが後輩の小・中学生を教える」「講習会の後、秋のコンテストまで、参加者から要望があれば先輩たちが中学校などに"出前講習"に行く」など、U-16プログラミングコンテストの名にふさわしいかたちに進化した。学生たちを指導する制御情報工学科・江崎修央教授は、「講師役で参加する学生や出前講習のかたちなどは、あまり型にはめずに緩やかに考えていく」という。8月25・26日に開かれた鳥羽商船高専での事前講習会では、三重県でプログラミングを楽しく学ぶ場を子どもたちに提供するPCN三重の岡村康子さんが講師を務め、チューターとして制御情報工学科2年生の女子学生5人が子どもたちの間を回って指導にあたった。
参加したのは、2日間合わせて小学生32人、中学生15人の計47人。すでに過去の講座でプログラミングの経験がある子どももいる。講座は、講師とチューター5人の紹介、身の回りにあるコンピュータの話から入り、IoT、プログラムの役割、プログラミングを学ぶことの意味などをやさしく説明していく。目の前に置かれたIchigoJamの電源を入れる頃には、子どもたちの集中力が高まっているのがわかる。
そこからは、ミニゲームをつくったり、LEDの動作を試したりする実際のプログラミングだ。そして加速度・赤外線・測距・ジョイスティックという四つのセンサのうち一つを使って、自分だけの作品を考え、つくっていく。昼休みをそこそこに切り上げて作品づくりに取り組む子どもがほとんどで、最後は全員が自分の作品をプレゼンテーションして、一日のプログラムを締めくくった。
もともと「いちごジャムでマイコンプログラミング」が公開講座として地域に浸透していたことや、事前に関係機関と話し合いを重ねたことで、U-16プロコン三重大会は三重県、伊勢・鳥羽・志摩・鈴鹿の各市教育委員会、鳥羽商工会議所の後援と、さらに民間企業5社の協賛を得ている。この連携が単にU-16プロコンにとどまることなく、地域のプログラミング教育やICT教育に非常によい循環をもたらしつつあることは、特筆に値する。実は事前講習会の前日、24日には、伊勢市教育研究所と鳥羽商船高専の共催で「教職員プログラミング講座」が開催され、30名を超える小・中学校の教員が参加した。
伊勢市教育研究所の出口晃ICTアドバイザーは、「2020年の学習指導要領改訂で、小学校でのプログラミング教育が始まる。これまでプログラミング経験のない現場の教員たちは、『自分にできるだろうか』という漠然とした不安を感じている。こうした不安を払拭するため、またプログラミングのおもしろさに触れてもらうためにこの講座を開講した」と語る。講座では、プログラミングの基礎を学んだあと、プログラミングロボット教材のLEGO マインドストームやIchigoJamを使ったプログラミング体験に取り組んだ。
講師を務めた江崎教授は、「プログラミングを『キーボードを叩いてコードを書いていくこと』と思い込んでいた先生たちが、プログラミングの考え方を学び、実際に動作を体験すると、『こういうものなのか』と納得してくれた。わからないこと、困ったことがあったら相談できる支援体制を構築したい」と語る。地域に頼もしいプログラミング教育のネットワークが構築されることで、三重の小・中学生=ITジュニアの卵たちは大きく成長していくことだろう。U-16プロコンが、その核となって機能していくことは間違いない。
(文・写真:ITジュニア育成交流協会 市川 正夫)