今年も激闘の旭川大会! 猛者が集った北海道大会! 参加者いっぱい釧路大会!!
2019年11月15日
イベント
寄稿
釧路工業高等専門学校
電子情報システム工学専攻 2年生
(プログラミング研究会)
寺地 海渡
旭川での激闘から早くも2週間が過ぎようとしている。この間、旭川は初雪を迎え、実行委員の間からは「初雪前に開催できてよかった」と、安堵の声が上がっていた。
11月3日、北海道旭川市で第9回U-16プログラミングコンテスト旭川大会/第6回U-16プログラミングコンテスト北海道大会が開催され、会場のイオンモール旭川駅前・イオンホールは大いに盛り上がった。旭川大会には、作品部門と新設のIoT部門、そしておなじみの競技部門がある。競技部門に出場した小学校5年生から高校1年生まで、54人の選手は、まずは午前中、同一のエージェント(ボット)との一発勝負で得点を競う予選に臨んだ。選手のなかには、北海道大会に駒を進めて対人戦になることを見越したプログラムで戦い、その自信を惜しげもなく披露しながら、相応の実力を見せつける猛者もいた。歓喜と悲嘆の声が上がるなか、大会自体はスピーディな流れ作業で進んでいった。
私はカメラマンとして試合の様子をうかがい続けていたが、各選手の表情は悲喜こもごも。プログラムとは、結局のところコードを書いた人に結果が帰結する。賽を投げた人も、匙を投げた人もいたとは思うが、もしこのコンテストで喜怒哀楽のいずれかを感じ取ることができたなら、ぜひそれを大事にして次のプログラミング学習につなげてほしい。来年のU-16プログラミングコンテストに挑戦すると、なおいい。何しろ大会をボランティアで運営している大人が諸手を挙げて喜ぶ。さらに付け加えれば、次回のコンテストでは、キャラクター部門への応募が増えて、「CHaser」の画面に彩が増すことを期待している。絵心がある諸子にはぜひとも一筆描いてもらいたい(さらにさらに話がそれるが、釧路高専では、「CHaser」の盤面を3Dで描画して見た目を豊かにする研究を行っている。これから「CHaser」はがぜん盛り上がっていくだろう)。
午後はいよいよ北海道大会だ。旭川大会の上位12人と、札幌大会、函館大会、帯広大会、そして釧路大会の上位3人、総勢24人によるトーナメント戦である。ちなみに、わが釧路勢は昨年に続いてベスト8で全員が敗退し、準決勝進出は果たせなかった。しかし試合に勝ったときの喜びようは、選手本人よりも釧路大会実行委員会のわれわれのほうがすさまじく、子どもたちよりもはしゃぎながら応援していた。
北海道大会決勝トーナメントには、旭川大会で自信をみせていた猛者=愛宕中学校3年生の妻沼朔寿さんも当然進出。単に強いだけでなく、自分のキャラクターが狭い閉鎖空間に閉じこもってしまうというピンチに陥っても、対戦相手が通信を切断してしまう偶然の勝利をもつかみ取る勝ち上がりをみせて、堂々の優勝を飾った。どのようなマップで試合をしても、盤石の構えで勝つよう仕上げてきたエージェントは、パソコンがない環境でもソースコードをノートに書いて考え続けたという、まさしく執念の賜物だった。惜しくも準優勝に終わったのは昨年北海道大会ベスト16に入った札幌市立東月寒中学校2年生の藤田響さん、3位は旭川工業高校1年生の松浦涼太さんだった。
作品部門は、金賞が動画作品で応募した北星中学校3年生の金箱一花さん、銀賞が中央中学校1年生の村形埜青さん、3位が旭川商業高校1年生の岩上舞衣さんだった。また、IoT部門特別賞を山部小学校の石黒幹太さんが受賞した。
スクリーンで華やかな戦いが繰り広げられる一方で、会場の片隅では、旭川ではおなじみとなったいわゆる「裏大会」が開かれていた。予選落ちに甘んじた選手や決勝トーナメントで惜しくも敗れてしまった選手が、悔しさとあり余る熱量を発散すべく、自分たちで試合環境を構築して場外戦を行っているのである。道内各地からやってきた選手たちにとって、予選落ちなら1試合だけ、決勝トーナメントに残っても数試合で帰らなければならないのはもったいない。裏大会で選手たちは、試合中には試せなかった作戦を実行したり、他地域とプログラムについてアドバイスしあったりと、精力的に交流していた。
競技部門の勝負が決した後、IoT部門、作品部門、競技部門の表彰式が行われ、すぐれた戦績で勝ち上がってきた猛者や秀でた作品を作ってきた参加者に表彰状が手渡された。競技部門の熱冷めやらぬなか、表彰状を受け取った参加者に会場から盛大な拍手が贈られた。また、コンテストが開かれるまでに各地域でプログラミングの指導を行うなどしていた旭川工業高校の情報処理部、旭川工業高等専門学校の最先端テクノロジー同好会にも感謝状が贈られた。
こうして、令和元年のU-16プログラミングコンテスト旭川大会・北海道大会は、熱狂のなかに幕を下ろしたのであった。
さて、ここで釧路大会のご報告もしておきたい。10月12日に行われた第8回U-16釧路大会の参加者は11人で、うち10人が釧路工業高等専門学校(釧路高専)の1年生だった。これは大会の運営に協力している釧路高専のプログラミング研究会(プロ研)に所属している1年生の会員に対して、プログラミングの練習の場として挑戦する格好の場として参加を促したことが大きな要因であったと思える。昨年の寄稿でも言及したが、プロ研の1年生を大会に参加させることで、翌年以降は指導者としてU-16プロコンに協力できるようになった。
今年の釧路大会も釧路OSSコミュニティが主催し、プロ研が大会中の実況や解説役を買って出た。実況役や解説役のほぼ全員が過去の大会参加者なので、それぞれに思い入れが強く、どうしても試合ごとにプログラムやエージェントの挙動に対する解説が過熱してしまった。結果として釧路大会は、開会から閉会まで、すばらしい解説が試合の隙間すべてを埋め尽くす隙間のないコンテストとなった。
手前味噌ではあるが、そもそも今年のプロ研は、大漁の、いや大量の新入生が入会してくれたこともあって、いまや1学級を超える人数を誇る大所帯と化している。新入会員のなかには、高専界隈ではその存在が知られている「還暦高専生」もいる。この方には、釧路大会の見学に顔を見せた際にそのまま実況席に座ってもらい、小粋な実況をしていただいたうえに、旭川大会の視察にもご招待するなどして、この秋にたっぷり「CHaser」の魅力とプログラミングコンテストの熱を浴びてもらった。今年、宮崎県都城市で行われた高専プロコンにも挑戦していたので、来年度以降もより積極的にプログラミングコンテストに関わってくれるであろうと大いに期待している。
釧路には、よくも悪くも独特のプログラミング環境があると考えている。16歳以下の少年少女にプログラミングを教えるには、やはり「北海道はでっかいどう」故の困難がつきまとう。他県なら県境をまたぐほどの距離を移動することもあたりまえで、子どもたちにとってはコンテストに参加することも、居住地によっては大変なことになってしまう。そんな環境のなかでも、旭川に次いで回を重ねる釧路大会は、絶やすことは許されない一種の使命を帯びつつあるように感じている。実際に釧路OSSコミュニティの皆さんがこれまで重ねてきた苦労を知る者として、釧路大会は地域にとって重要度の高いプログラミングの場として存在感を高めていることを実感しているのである。
閑話休題。今回の北海道大会にも、釧路大会を勝ち上がった3人の選手が参加した。結果は前回大会同様にベスト8止まりだったが、敗退したあとも裏大会に顔を出して「CHaser」を楽しんでいる姿を見て、彼らにとって有意義な時間になっている、と内心喜びを感じた。このコンテストを通じて、プログラミングの楽しさや競技プログラミングという遊びに慣れ親しんだ彼らは、これからもプログラミングと正面から向き合って成長してくれると思うし、そうできるように環境を維持していく大切さを彼らから学んだ。
今年も大盛況のうちに終わった道内各地域の大会と北海道大会。運営の面からも他地域との交流や連携など、新たなつながりや課題が生まれた。次回は10回を数える旭川大会。次々回遂に10回になる釧路大会。そして、国内各地に同志の輪が広まったことでいよいよ機運が高まる全国大会。これからも少年少女とそれを支える大人たちの挑戦は続いていく。