アイデアと実現力を競う高専プロコン、東京工業高専が全部門制覇
2019年10月18日
ニュース
プログラミングを学ぶ高専生の祭典、全国高等専門学校第30回プログラミングコンテスト(高専プロコン/主管校:都城工業高等専門学校)が、10月13・14日の2日間、宮崎県都城市の都城総合文化ホールで開催された。30回目の節目の大会となった今年は、台風19号の影響で一部チームが参加できないなか、「IT革命 起こすっちゃが」の大会テーマの下、全国から約1,000人の学生・教員が集った。
高専プロコンは、高専生がこれまで学んだ成果を生かしてつくり上げたICT作品を通して、アイデアと実現力を競うコンテスト。与えられた課題に沿って社会的な問題の解消を目指す課題部門、自由な発想と独創性を競う自由部門、トーナメント方式でゲームの勝敗を競う競技部門の3部門がある。予選を経て、最終的に本選に残った作品の独創性・柔軟性や有用性、そのレベルの高さは、企業や自治体から高く評価されている。
課題部門と自由部門は、作品だけでなくプレゼンテーションとデモンストレーションも審査の対象となる。両部門とも、予選を通過した20作品が登場した。課題部門の今年の課題は、「ICTを活用した地域活性化」。「地域への貢献」をうたう高等専門学校としては恒常的なテーマだが、地域創成――逆にいえば衰退しつつある地域の再生を目指す喫緊の課題でもある。子どもや高齢者、障がいをもつ人などに着目した作品が多くみられたなか、最優秀賞/文部科学大臣賞に輝いたのは、東京工業高専の「:::doc(てんどっく)――自動点字相互翻訳システム」だった。視覚障がい者のために、印刷文字をスキャンして点字に、逆に点字を印刷文字に変換する機能のほか、点字をスキャンしてインターネットで送信する機能をもつ。
自由部門はVRを活用した作品が多くみられ、最優秀賞/文部科学大臣賞も東京工業高専の「Gulliver Blocks――VRで新しい創造体験を」だった。これはブロック遊びをVR化することで現実のブロック遊びの制約を取り払い、スケールの巨大化や制作過程の共有など、遊びの可能性を大きく広げた作品。自由度の高さによって、作品づくりに取り組む人の想像力と創造力を大きく刺激する。
競技部門は、マス目に区切ったフィールド上で、いかに多くの陣地を占有できるかを競う陣取りゲーム。昨年のプログラミングと人間の動きによる"リアル陣取り"ではなく、画面上で戦うかたちになったが、途中経過をわかりやすく表示するなど、運営側の努力が実って、より「見ていて楽しい」競技になった。ここも、最優秀賞/文部科学大臣賞は東京工業高専の「独立行政法人国立高等専門学校機構東京工業高等専門学校」チームだった。司会者から「学校の名前を背負っちゃってますから、負けるわけにはいかない」と言われながら、高得点のマスを取得する安定した戦いぶりで頂点に立った。
高専プロコン30年の歴史のなかで、過去に同一校による複数部門受賞はあっても、3部門制覇は東京工業高専が初めて。閉会式が始まる時点で受賞が公になっているのは競技部門だけで、参加者は閉会式で初めて受賞校を知ることになる。競技部門に続く課題部門の発表では東京工業高専の学生が歓声を上げたが、そのあとの自由部門の発表では、歓声と会場の驚きの声が同じトーンになっていた。
東京工業高専の3チームは、来年1月24日に開催されるBCN ITジュニア賞2020表彰式のステージに立つことになる。
(文・写真:ITジュニア育成交流協会 市川 正夫)