八戸学院大学の大谷学長、フィリピンで日の丸IT専門大学設立に奔走
2017年10月20日
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「ものづくりニッポンが危機に瀕している。製造業、特に組込み系のIT人材不足は深刻だが、日本企業が優秀な人材を採用し、育てることは難しくなっている」そう語るのは、八戸学院大学の大谷真樹学長。いま、2019年をめどにフィリピンのクラーク国際空港にほど近いパンパンガ州アンヘレス市で、毎年1000人のIT人材輩出を目指す大学をつくろうと奔走している。IT企業を目指す人材をASEAN各国から集めてフィリピンで教育し、ゆくゆくは日本のIT企業を支える人材を育成するのが目的だ。
ベースになるのは、来年6月にフィリピン・ターラック州サンマニュエル市に開校する八戸学院カーテル高校だ。現地学校法人のカーテル科学教育財団と共同で運営する6年間の中高一貫校で、日本語や日本文化を含むカリキュラムを展開する。卒業生を八戸学院大学短期大学部に新設する福祉学科で受け入れ、日本で国家資格の介護福祉士取得を後押しし、介護の場面で深刻な人手不足に悩む八戸市に人材を提供する。人材を求める八戸市の介護関連企業にも協力を呼びかけ、来日する学生の「里親」になってもらい、生活費などを奨学金として提供する。
19年の設立を目指す大学でも、人材を求める企業が大学を通じて学生に奨学金を提供するかたちで、時間をかけて優秀な人材を育てる。現在、カーテル科学教育財団が運営する短大を4年生大学に改組して移転。日の丸ITの専門大学にする計画だ。ASEAN進出を狙う中小IT企業にとって、現地での人材採用や教育は大きな障壁だ。オフショア開発などで日本と現地企業との間を取りもつ人材や、ものづくりの場面でより専門的なタスクをこなす人材、またASEANで日系企業の現地駐在員として働く人材の育成を目指す。
大谷学長は、「奨学金の原資は協力企業の寄付。黒字企業にとって学校法人への寄付は控除の対象になり、節税にも役立つ。そのうえで人材の安定供給を受けるメリットもあって、一石二鳥だ。首都圏のIT企業を中心に声をかけ、ぜひとも日の丸ITの専門大学を設立したい」と話した。(BCN・道越一郎)