第8回U-16プロコン旭川/第5回北海道大会、優勝は初出場の中学2年生

 11月3日、北海道旭川市で第8回U-16プログラミングコンテスト旭川大会(U-16プロコン旭川)と、第5回U-16プログラミングコンテスト北海道大会が開催された。会場のイオンモール旭川駅前では、昨年の雪辱を期す再挑戦組からこの夏にプログラミング学習を始めたばかりの入門組まで、68人の子どもたちがこの日のために磨いてきたプログラミングの技を競った。

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先輩たちによる指導が子どもたちの才能を開花させる

 2011年にここ旭川市で始まったU-16プロコンは、小・中学生と高校1年生を対象に、対戦型ゲームプラットフォーム「CHaser」を使用する競技部門と、ゲームやグラフィクスなど、自由に作成したデジタル作品を競う作品部門で構成する。「プログラミングを学んでいる高校の生徒や高等専門学校の学生が後輩たちを指導する」「『子どもたちの未来をつくる』という志をもつ大人たちが、ボランティアで運営を支える」「将来の地域をつくる人材を育て、地域を発展させる」という、すばらしい仕組みと理念をもっているプログラミングコンテストだ。

 U-16プロコン旭川は、今年も旭川工業高等専門学校最先端テクノロジー同好会と旭川工業高等学校情報処理部の有志たちが講師になって、7月末の事前講習会だけでなく、大会までの3カ月間、参加する中学校に通ってプログラミングを指導してきた。「今年は11回教えに行った」(旭川工業高校3年の鎌田聖士さん)という先輩たちによる綿密なフォローが、大会が中学校パソコン部の活動目標になる理由の一つであり、ここ数年、参加する中学校の数を増やしてきた原動力になっている。今年の旭川大会の参加者は、小学校5年生から高校1年生まで、59人。地区で大会参加に向けてプログラミング教室を実施してきた富良野市から9人が参加したほか、旭川市内では新たに神居東中学校、旭川商業高校からの参加があった。

 一方で、実行委員会で大会運営を支える大人たちの情熱も、年を追うごとに高まっている。「パソコンやプログラミングに興味をもつ子どもたちに活躍の場を提供し、ほめ称える」という開催目的が、ITを生業とする、あるいは趣味とする大人たちの琴線に触れないはずがない。道内外の開催地が増えたことで大会の存在を知る人が増え、協働や共感の環が広がりつつあることは、これからのU-16プロコンにとって大きな支えになる。もちろん、この大会に出場して高校・高専から社会に巣立っていった子どもたちも、準備段階から大会をサポートし、当日は参加者たちの相談役を務めるなど、大きな力になっている。

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競技部門はゲーミングプラットフォーム「CHaser」で勝負。会場は拍手と歓声に包まれる

 午前中の旭川大会予選は、事前に公開されていたボットとの対戦で順位を決め、15位までが予選を通過する。午後の決勝は北海道大会と併催で、旭川大会の予選を通過した15人に、釧路大会、帯広大会、それに今年が第1回の札幌大会のそれぞれ3位まで、計9人が加わり、合計24人のトーナメント形式で行う。旭川の予選1・2位、釧路・帯広・札幌大会の1・2位はシード扱いでベスト16から登場。北海道大会チャンピオンはもちろんこのトーナメントの頂点に立った人だが、旭川大会は旭川勢のうちトーナメントで最も上位に勝ち残った人から順位を決めていく。旭川勢の活躍によっては、北海道大会と旭川大会の結果がまったく同じ、という可能性もあるわけだ。

競技部門は安定した力を発揮した福田華蓮さんに栄冠

 午前10時半に始まった予選では、これは毎年のことだが、ブロックにのめり込んで自滅してしまったり、途中で同じところを回り続けたりしてしまうプログラムがみられた。しかし、最も多くの参加者を送り込んだ旭川市立中央中学校の橋本崇教諭が、競技中に「予選通過ラインは90点くらいだと予想していたが、このままでは100点くらいになるかもしれない。レベルが高い」と舌を巻いたように、ほとんどのプログラムが最後まで動き回ってアイテムを集めていた。旭川予選1位通過は尾形優伍さん(中央中学校1年生)で、120点を獲得。予選通過ラインは99点だった。

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中学校2年生の福田華蓮さんが初出場で栄冠を勝ち取った

 午後の旭川大会決勝トーナメント・北海道大会では、帯広大会と札幌大会の代表はそれぞれ最初の戦いで姿を消したが、釧路大会の3人はベスト8まで残る健闘をみせた。3位決定戦は中央中学校同士の対戦で、1年生の高橋昊瑶さんが3年生の澤田侑希さんを破り、3位に滑り込んだ。決勝は、旭川大会予選1位の尾形さんと予選6位の福田華蓮さん(神居東中学校2年生)の対戦。最後の試合で相手キャラクタの上にブロックを置く「プット勝ち」を収めた福田さんが2連勝して、見事第9代旭川チャンピオン、第5代北海道チャンピオンに輝いた。

 福田さんは予選の前に「『この大会に出場するから』といって、お父さんにパソコンを買ってもらった」というコメントが紹介され、会場を沸かせていた。午後の決勝・北海道大会では安定したバランスのよいプログラムで勝ち上がった。本人も「初めてでここまで来ることができて、正直言ってびっくりしている」。試合が終わると「ありがとうございました」と、礼儀正しく対戦相手におじぎする姿が印象的だった。

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作品部門にエントリしたゲーム作品はすべて競技部門の参加者に開放。休み時間には子どもたちがゲームに興じていた

 作品部門は全員が競技部門にも重複出場した中央中学校の3年生で、それぞれゲーム作品を出品。優勝は北川優奈さん、2位が阿部颯太さん、3位が尾村奏磨さんだった。

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この誇らしげな笑顔が子どもたちの成長の証だ

 会場では、早々に敗退してしまった子どもたちが別室で初対面の相手との"他流試合"に臨むなど、この大会に向けて練り込んできた自分のプログラムの実力を試す姿が見られた。毎年、子どもにも大人にも大会を心待ちにする「U-16プロコンのファン」を増やしながら開催を重ねてきた旭川大会、釧路・帯広・札幌のチャンピオンたちが顔を揃える北海道大会は、いまや北海道でプログラミングを学ぶ子どもたちの、また中学校の理科系部活動の大きな目標になるまでに成長した。今後、全国でさらに多くの子どもたちがプログラミングの世界で自分たちの可能性を広げることができるように、開催地を増やし、参加者を増やしながら前進していくだろう。NPO法人ITジュニア育成交流協会は、微力を尽くしてその活動を応援する。

(文・写真:ITジュニア育成交流協会 市川正夫)