【寄稿】第39回高校プロコン、埼玉県立越谷総合技術高校が初優勝

北海道旭川工業高校 情報技術科教諭
小檜山 淳(文・写真)

 今年で39回目を迎える伝統ある全国高校生プログラミングコンテスト(主催:全国情報技術教育研究会、高校プロコン)が、11月17日、埼玉県さいたま市の大宮ソニックシティで開催された。会場では、選手や指導教諭を含めて約100人の観衆が固唾を飲んで勝負の行方を見守った。

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より高度なアルゴリズムが求められるかたちに進化

 高校プロコンは、自律型クライアントによる対戦型ゲーム「CHaser Online」を用いて勝敗を決定するコンテスト。得られるマップの情報を用いて自己判断して行動する自律プログラムを作成し、得点アイテムの獲得や「Put」コマンドによる他プレーヤーへの攻撃などによって得られる点数を競う。

 得点アイテムには、それぞれ獲得点数が異なる「化石」「三葉虫」「ターゲット」「アイテム」があり、アイテムの種類を判断してより効率よく得点する戦略が求められる。そして、得点アイテムの獲得以上に勝負のポイントになるのが、「Put」コマンドだ。「Put」は、隣接した他プレーヤーを攻撃することで、自分は残りターン数×10点の点数が得られる一方で、相手には同じ得点分の損失を与えるもの。最も得点の高い「化石」が150点であるのに対し、「Put」コマンドでは残りターン数によっては1000点を超える得点が移動し、勝敗の行方を大きく左右するので、どのチームも「Put」コマンドを戦略の要として実装している。

 また、マップ上には離れた地点へと移動できる「ワープ」が存在し、まだ得点アイテムが多数残っているエリアへ移動したり、他プレーヤーから距離を取ったりと、幅広い戦略に利用することができる。昨年の大会までのマップは点対称で組まれていたので、離れたエリアのマップをある程度は推測できたのだが、今年はマップの配置やプレーヤーの初期位置がランダムになったことで、すばやい状況把握と的確な状況判断が必要になり、より高度なアルゴリズムが求められるようになった。

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オンライン予選上位が敗れる波乱、埼玉県勢は初の栄冠

 高校プロコンは、事前にオンラインで第1次予選、第2次予選が行われ、参加した全国55校から8校が本戦へ出場した。予選は8チームが一度に対戦するバトルロイヤル方式で行われ、2戦した結果の上位4チームが決勝トーナメントへと進出した。

 予選の2試合は、どちらもマップの至る所で激しい「Put」合戦となり、「Put」合戦を有利に運んだチーム、もしくはうまく「Put」合戦から逃れたチームが上位を占めた。この結果、1位から順に埼玉県立越谷総合技術高校、長崎県立長崎工業高校、山梨県立都留興譲館高校、北海道旭川工業高校の4校が決勝トーナメントへ進んだ。過去に数度優勝しているオンライン予選1位の宮城県工業高校や、昨年度の優勝校で予選2位の愛媛県立松山工業高校といった強豪校が予選で敗退する波乱の結果となった。

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 上位4チームによる決勝トーナメントは、1対1で2試合対戦し、勝利数の多いほうが勝つルール。1勝1敗の場合は、合計得点の多いほうが勝利する。準決勝第1試合の越谷総合技術高校と旭川工業高校の対戦は両チームとも1勝ずつで、「Put」攻撃を重ねて大きな得点を得た越谷総合技術高校が旭川工業高校を下して決勝に進出した。準決勝第2試合の長崎工業高校と都留興譲館高校の対戦は、双方が「Put」攻撃を行う一進一退の攻防となったが、長崎工業高校が2連勝して決勝へと駒を進めた。

 決勝は準決勝よりもターン数が多くなり、決勝の1回目はマップ上の得点アイテムがほとんど回収されるレベルの高い戦いとなった。得点アイアムを回収する合間に「Put」合戦が繰り広げられる白熱した攻防となったが、まずは「Put」合戦で上回った越谷総合技術高校が1勝。2回目は、今大会最小サイズのマップで激しい「Put」合戦になると予想されたが、越谷総合技術高校がマップ隅で往復を繰り返すループのアクシデントに見舞われて「Put」合戦にならず、順調に得点アイテムを獲得した長崎工業高校が勝利した。長崎工業高校は1勝1敗に追いついたが、1回戦のリードを守りきった越谷総合技術高校が僅差で逃げ切り、埼玉県勢初の栄冠に輝いた。