第31回高専プロコン、初のオンライン開催──東京高専が2年連続で全部門制覇

 全国高等専門学校連合会は10月10・11日の2日間、第31回全国高等専門学校プログラミングコンテスト(高専プロコン)本選を開催した。折からの新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、初めてオンラインで実施。例年実施している「競技部門」は見送り、作品部門のみで開催した。最優秀賞は、課題部門が「ぷらんとこれくしょん-体験型植物観察学習システム-」で東京工業高等専門学校が受賞。課題部門も「Kiseki Sketch-あなただけの地上絵を-」で東京工業高等専門学校が受賞した。同校は昨年に引き続き、2度目の全部門制覇を達成した。

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各校のプレゼンやデモを自由に見学できるバーチャル会場

 開会式で、全国高等専門学校連合会会長で奈良工業高等専門学校の後藤景子 校長があいさつ。「情報通信技術のアイデアを実現する力を競い、創造性、独創性を育てる高専プロコン。年々技術レベルは向上しており、産業界や学界から高い評価を得ている。コロナ禍の社会を支える情報通信技術をテーマにした高専プロコンは、例年にも増して意義深い」と話した。

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コロナ禍での開催は例年にも増して意義深いとあいさつする、全国高等専門学校連合会会長で奈良工業高等専門学校の後藤景子 校長

 今回は「北の大地で拓け ICT未来」をキャッチフレーズに、苫小牧工業高等学校が主管校を務めた。本選には、予選86作品から勝ち残った20作品と海外から参加した4作品を加えた24作品が進出。高専生ならではのプログラミングのアイデアと技術を戦わせた。「楽しく学び合える」を課題にした課題部門と、自由部門に分かれ、オンラインで8分間のプレゼンテーションと2分間のデモンストレーションで優劣を決する。プレゼンやデモ、質疑応答の模様はYouTubeでライブ放送したほか、バーチャルイベント会場も開設。来場者がアバターになって自由に各チームのプレゼンやデモを見て回れるよう工夫も施されていた。

 課題部門で最優秀賞を獲得した東京工業高等専門学校の「ぷらんとこれくしょん-体験型植物観察学習システム-」は、小学生を対象に、「植物の観察学習」を児童自らが関心を持ち自発的に行えるようにしたアプリ。スマートフォンやタブレットで撮影した植物に対し、画像認識APIを通じて名前などの情報が得られる。位置情報や日時、時刻、気象情報なども併せてクラウドサーバーに保存され、時間の経過も記録する植物マップを作成したり、共有したりすることもできる。

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表彰式で喜びのコメントを語る東京高専の2チーム

 自由部門で最優秀賞を獲得した東京工業高等専門学校の「Kiseki Sketch-あなただけの地上絵を-」は、健康のためにランニングする人たちをサポートするアプリ。地図上に描いた「ナスカの地上絵」のような任意の線画をもとに、ランニングルートを自動で生成。実際に走って絵を完成させていくというもの。ランニング中は音声や振動で正しいルートをナビゲート。仲間と協力して、大きな絵を描くこともできる。楽しんで継続できるよう、ランニングに絵を完成させるという目的を付与した。

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東京高専が行った自由部門のデモンストレーション

 競技終了後にはクリプトン・フューチャー・メディアの伊藤博之 代表取締役社長が「初音ミクから学ぶデジタルコンテンツの可能性」と題して特別講演を行った。音声合成システムのボーカル音源ソフトやキャラクターからなる「初音ミク」の登場から現在までを紹介した。音にこだわる得意分野を掘り下げつつ後に横展開して広げてきた、自社の「T字型経営」も解説。高専プロコンの参加者にも「好きな分野を掘り下げて横に広げていくT字型のスタイルで未来づくりにチャレンジしてほしい」とエールを送った。

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クリプトン・フューチャー・メディアの伊藤博之 代表取締役社長が「初音ミクから学ぶデジタルコンテンツの可能性」と題して特別講演

 閉会式では審査委員長を務めた北陸先端科学技術大学院大学の松澤照男 名誉教授が講評。「一部に未完成の作品があるなど、完成度が低いものがみられた。また動画審査への取り組みでチーム間に大きな差ができた」としつつも、「コロナで活動が制約され、オンライン大会という初めての試みながら、各作品は一定レベル以上のものが確保できた。全般に、限られた時間のなかでよく頑張ったという評価」と締めくくった。

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全般に、限られた時間のなかでよく頑張ったと講評する、審査委員長を務めた北陸先端科学技術大学院大学の松澤照男 名誉教授

 次回、第32回高専プロコン 本選は、10月9・10日の2日間、秋田工業高等専門学校を主管校に秋田アトリオン(秋田総合生活文化会館)で開催する予定。(ITジュニア育成交流協会・道越一郎)