中国プログラミング教育最前線(3)山東建築大学コンピュータ科学技術学院
2018年01月29日
ニュース
中国・山東省の山東建築大学は、およそ2万6000名の学生を擁する省立大学。建築、土木、交通、空調、芸術などをはじめとして全部で19の学部がある総合大学だ。コンピュータ関連の学部は山東建築大学コンピュータ科学技術学院で済南市にある。ここでプログラミングを教える杨磊教授に、山東建築大学コンピュータ科学技術学院の教育の実情を聞いた。
●卒業後のニーズを受けてJAVAに力を入れて教育
山東建築大学コンピュータ科学技術学院には、コンピュータ科学技術学科、ソフトウェアエンジニアリング学科(開発・テスト)、ネットワーク工学科の3つの学科がある。学生は合せて1500名。教授をはじめ66名の教師がコンピュータやソフトウェアを教えている。杨先生はソフトウェアエンジニアリング学科に所属し、主にソフトウェア開発を教えている。
ソフトウェア開発では、学生が入学するとまずOSなどのコンピュータのこそ知識を勉強し、開発言語の勉強に進んでいく。杨教授は「現在山東建築大学コンピュータ科学技術学院で最も力を入れている言語はJAVAだ」と語る。山東省立の大学であるため、研究よりも社会への人材供給に重きを置いている。そのため、現在山東省で特にニーズが高いJAVAを中心に教えているという。しかし、将来的に主流言語が変わっていっても対応できるよう、コーディングそのものよりも、考え方を重視した教育方針を採っている。「CやC++といった言語は組み込み系ではよく使うが、プログラム開発では、JAVAが主流。JAVAの基礎からはじめ、Webのフロント回りを勉強し、JAVA EE(Enterprise Edition)に入っていく流れ」だという。
学生のプログラミングに対するモチベーションについては、2001年以降中国政府が大学を大幅に増やした結果、大学に入学するハードルが低くなり、学生のレベルが一時的に大きく下がった時期があった。また、この時期は経済も不安定で親も子どもの教育どころではなかった。さらに一人っ子政策で結果的に増えたわがままな一人っ子の教区が難しかったという面もある。しかし、経済が成長期にさしかかった90年以降生まれた子どもたちの親は、教育に対する関心も高まってきた。その結果、徐々に学生のレベルも上がってきているようだ。山東建築大学の中でのコンピュータ科学技術学院の位置づけに関しては「建築関連よりもやや劣るが、確実にポジションが上がってきている」と杨教授は話してくれた。
●人気の卒業制作はBigDataや画像解析、携帯ゲームなど
卒業制作で取り組むプログラムでは、AIを利用するまでには至っていないが、BigDataや画像分析、顔認識システムなどが人気だ。そのほか、携帯アプリやゲームも人気だ。企業向けWebサイトの制作なども多いという。杨教授の研究テーマと関連が深いものに関しては、毎年7-8名のグループと一緒につくるものもあるという。政府向けの情報管理システムや管理系の制作が多いという。最近では、学生の出席管理システムもつくっている。100名の学生の講義への出欠を数秒で把握するというもの。GPSと組み合わせ先生との距離で出欠を判定することもできる。
大学院の院生は14名とわずか。学院内から大学院に進む学生はさらに一握りで、他の大学から進学するパターンが多いという。その他の進路も、地方大学の位置づけであるため、学生の多くは山東省の企業に就職する。「私が担任していたクラスを例に取ると、40数名のクラスのうち、およそ30名が地元企業に就職。10名が北京の企業に就職、海外に出たのは1名、そのほかが数名という感じ」(杨教授)だ。就職した学生のうち、およそ6割は何らかの開発の仕事に就いているという。
●学生を励ます目的で開催する、山東省大学生ソフトウェア設計コンテスト
山東建築大学コンピュータ科学技術学院の学生が目指すプログラミングコンテストとしては、国際的な大会であるACM-ICPCや、中国の全国ソフトウェア大会、挑戦杯、創業大会、などがある。しかし、いずれも誰もが参加できるような大会ではない。しかし、山東省で毎年開かれる山東省大学生ソフトウェア設計コンテストは誰もが参加できるのが特徴。とにかく能動的に参加させ、学生を励ますのが目的だ。杨教授は、山東省大学生ソフトウェア設計コンテストの副秘書長を務めるキーマンでもある。2017年11月に開かれた表彰式では、課題の作成や審査、表彰式の運営などの功績が認められ特別功労賞を受けた。
コンテストについて杨教授は「山東建築大学コンピュータ科学技術学院からの応募は2年生がほとんど。2年生のうち6割ぐらいの200名以上は毎年応募している。夏休みはみんなコンピュータ室にこもって毎日頑張っている。そうした学生を励ますため、プログラムが完成すれば何らかの賞がもらえるようにした。応募者の7割ぐらいが完成させている。とにかくプロセスを重視して学生を励まし、社会と接するチャンスをつくることを目的にしている」と話してくれた。若者の心に人ともす活動の重要性は、日中ともに変わらない。(ITジュニア育成交流協会・道越一郎)