第28回高専プロコン、維新ゆかりの地で若きIT志士が熱戦

 情報通信技術のアイデアや実現力を競う全国高等専門学校第28回プログラミングコンテスト(高専プロコン)の本選が10月8~9日、明治維新ゆかりの地・山口県周南市で開催され、若きIT志士が高専日本一の栄冠をかけて熱戦を繰り広げた。

106チームが日頃の成果を披露

 高専プロコンは1990年に第1回を開催し、2009年からはNAPROCK(NPO法人高専プロコン交流育成協会)国際プログラミングコンテストを同時に開催している。今年は周南市文化会館を会場に、「課題」「自由」「競技」の3部門で実施。予選通過校や、海外からのオープン参加チームなど、全国の高専から計106チームが参加した。

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会場の周南市文化会館には今年もノボリが並んだ

 開会式では、プロコン委員長を務める主管校・大島商船高専の石田廣史校長があいさつし、「相互の友情交換を十分に楽しみ、コンテストを通じて自らの柔軟な思考にもとづいた技術力と実践力をより高めてほしい」と呼びかけた。

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プロコン委員長を務める主管校・大島商船高専の石田廣史校長

 開会式後に初日のプログラムがスタートし、高専生の表情は、和やかな雰囲気から一転して緊張感でいっぱいに。各チームは競技部門の1回戦のほか、課題・自由部門のプレゼンテーション審査などに臨み、日頃の開発成果を披露した。

全試合満点のパーフェクト優勝

 「高専プロコンの華」といわれる競技部門は、前回に引き続いて枠の中にピースをはめて絵柄を完成させるパズルゲーム。大ホールのステージでライバル校と机を並べ、縦21.0cm、横29.7cmの枠に、多角形のピースを制限時間内にすべて並べてパズルを完成させるまでの早さと正確さを競った。

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競技部門は大ホールで開催

 各チームは、PCやスキャナ、カメラなどを駆使してピースの形状を取り込んで、用意したプログラムで組み合わせや配置場所をみつけていく。減点にはなるが、ヒントとして活用が認められたピースの形状情報・配置情報などを手がかりに、完成への道筋を探った。

 初日の1回戦4試合では、各試合の上位6チームが準決勝に進出。7位以下は敗者復活戦に回った。初日の結果を踏まえて、夜遅くまでプログラムの修正に取り組んだチームもあった。

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競技部門に挑む東京都立産業技術高専品川キャンパスの「てんぱ組」(手前)

 二日目は、敗者復活戦と準決勝、決勝戦が行われた。最終的に、東京都立産業技術高専品川キャンパスの「てんぱ組」が、唯一のノーヒントで全試合満点の偉業を達成し、優勝・文部科学大臣賞に輝いた。

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表彰状とトロフィーを手に安どの表情を浮かべる「てんぱ組」のメンバー

 「てんぱ組」は、当初は3人でエントリしていたが、体調不良のメンバー1人が欠場する事態に。それでも3年生と1年生のコンビが奮闘し、優勝が決まった瞬間、緊張から解き放たれた2人は安どの表情を浮かべていた。

 前回は、多くのチームがパズルを完成させられなかったが、今回は多くのチームが完成までこぎつけるハイレベルの展開。パズルが完成するたびに客席からは温かい拍手が起こり、会場は大いに盛り上がった。

課題・自由部門は独創性に溢れた作品が並ぶ

 課題部門は、東京五輪・パラリンピックを意識して、前回と同じ「スポーツで切り拓く明るい社会」がテーマ。各チームは、VR(仮想現実)空間でスポーツが体験できるプログラムや、審判や観戦を切り口にしたプログラムなどをお披露目した。

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鳥羽商船高専の「STEP――スコアブックと連動する動画閲覧システム」

 最高位の最優秀賞・文部科学大臣賞は、新たなスポーツ観戦・上達の支援システム「STEP――スコアブックと連動する動画閲覧システム」を開発した鳥羽商船高専が受賞した。

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課題部門で最優秀賞・文部科学大臣賞に輝いた鳥羽商船高専のメンバー

 自由部門は、水田の監視システムや会話型事故防止システム、ドローンを活用した水産業支援システムなど、課題部門に負けじとばかりの独創性に溢れた作品が並んだ。

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香川高専詫間キャンパスの「EachTouch」

 最優秀賞・文部科学大臣賞は、複数人でデバイスを囲み、タッチしたユーザーを識別しながらゲームを楽しむ「EachTouch」を発表した香川高専詫間キャンパスが獲得した。

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自由部門で最優秀賞・文部科学大臣賞を獲得した香川高専詫間キャンパスのメンバー

高専出身起業家がエール

 閉会式の前に行われた高専出身の起業家による特別講演会では、さくらインターネットの田中邦裕社長(舞鶴高専卒)とjig.jpの福野泰介社長(福井高専卒)が登壇。会場の後輩たちにエールを送った。

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田中邦裕社長(左)と福野泰介社長

 田中社長は、企業する際のポイントについて「お金をかけずに起業することが大事。リスクを低くするために、失敗しても笑っていられる金額でスモールスタートすることがおすすめだ」と述べ、奨学金で研究室にサーバを設置したことが、その後の起業につながったことを振り返った。

 そのうえで、「世の中、何をみるかで結論は変わる。やりたいことをみつけるために高専生活を送ってほしい。高専はネタが多いので、すごくおもしろいことがみつかるはず。就職しても、進学しても、『その先に自分のやりたいことがある』と確信をもつことができる人生にしてもらいたい」と訴えた。

 一方、福野社長は、「モノを売りはじめると、自然にビジネスの感覚が身についていく。スマートフォンのアプリでもいいので、自分なりに何かモノをつくって売ることが重要だ」と話し、高専生にチャレンジを促した。

 さらに、「社会をみることが大事。高専から一歩外に出ると、いろいろおもしろいものがある。好奇心があると、もっと好きなことがみつかる」と強調し、「高専時代にいろいろなモノをつくって、いろいろなモノをどんどん磨いてほしい」と語りかけた。

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高専プロコンを講評する神沼靖子審査委員長

 最後のプログラム、閉会式で講評に立った神沼靖子審査委員長は、「何よりも重要なのはプログラミング能力。これからもプログラミングの重要性を常に頭に入れて、アイデアや作品を考えてもらえるとうれしい」とアドバイスした。

 2日間の日程を終えた高専生らは、充実した表情で帰路についた。来年の高専プロコンは、阿南高専を主管校に、徳島県で開催される予定だ。なお、BCNは、今コンテストで文部科学大臣賞に輝いた3チームを、来年1月26日に開催するBCN ITジュニア賞2018表彰式に受賞者として招待する。

(文・写真:BCN 廣瀬秀平)